君と二人の201号室


「ママー!」

「こらっ!お店の中は走っちゃだめって言ったでしょ?」

「…ごめんなさい」



スーパーでよく見かける、親子の会話。

何気ないはずなんだけど……どうしても、気になってしまう。どうしても、目についてしまう。



「…お母さん……」

「菜帆?どした?」



そんな私を、拓海さんは不思議そうに覗き込んできたけど、私の視線は、さっきの親子を捉えて離さなかった。



「菜帆…」



拓海さんは何か言いかけたけど、私の視線の先にあるものを見ると、そっと私の頭を撫でてくれた。

その手はなんだか、あったかい。

拓海さんに撫でられるの、好きだなぁ…。



「…拓海さん、ありがとうございます」

「…なにが?」



私、もう知ってます。

その惚けたフリが、拓海さんの優しさだってこと。



「…なんでもないです。それより、キャベツ買っていいですか?今日の晩ごはんにも使いたいので」

「うん、いいよ。いいに決まってる。…野菜って、思ってたより安いんだね」

「今までどんなところ行ってたんですか…」

「コンビニ」



あぁ、なるほど…。

確かに、コンビニに生野菜は売ってないもんね…。



「菜帆、重そうだね。カゴ持つよ」

「…いえ、大丈夫です。多分、もう一つカゴ必要になると思うので。その時はお願いします」

「…わかった。そうするね」



少々不満そうだったけど、私が譲りそうにないことを学習(と言ったらおかしいかもだけど。)したのか、意外とすんなり受け入れてくれた。



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