君と二人の201号室
*
「菜帆ちゃん、お疲れ様」
「あ、千聖さん。ありがとうございます」
次のシフトに入っている千聖さん。
シングルマザーだから、子供が寝ている間にもこうして働くらしい。
かなり若い。美人。なのに気取ってなくて、かなり気さくで…。
お姉ちゃんみたいな人。
「あれ、菜帆ちゃん、何かあった?いつもよりボーッとしてるけど」
「…そうですか?」
「うん。ちょっといつもと違う感じがする」
…あの人に告白されたから、少し動揺してるのかな…。
自分では、そんなに動揺した感覚なかったんだけど。
「…千聖さんは、お客さんに告白されたことってありますか?」
「告白されたの!?」
少し食い気味で、千聖さんが聞いてくる。
「…はい」
「もしかして、コーヒーチョコレート青年?」
「…あ、はい、多分」
そんなあだ名がついてたんだ…。
…ってあれ?
「千聖さん、その人知ってるんですか?」
あの人が来る時には、滅多に千聖さんはいないのに。
何でピンポイントで…?
しかも私は、他にも色んなバイト掛け持ちしてるのに、よくここのバイトだってわかったな…。すごい。
「知ってるもなにも、彼、前まで昼間に来てたのよ。あ、私、昼間もシフト入れてるんだ。で、ある時からめっきり来なくなったと思ったら、夜の方のシフトの時、早めに来たらいるんだもの。びっくりしたな~」
「そうなんですか?」
「うん。で、時々早めに来る時は必ずいるんだもん。理由は最初、わからなかったけど。遠くから観察してたら、彼、ずっと菜帆ちゃんのこと見てるんだもん。あ、惚れてんだな、これ。って思ったよ」
まさか、千聖さんは気付いてたなんて…。
まぁ、私もずっとあの人見てるわけじゃないから、目が合わなくても全然不思議じゃないけど。
もしかして、本当に本気で告白されたのかな…。
なら、驚きすぎたとはいえ、あの反応は悪かったかな…。