君と二人の201号室





「菜帆ちゃん、お疲れ様」

「あ、千聖さん。ありがとうございます」



次のシフトに入っている千聖さん。

シングルマザーだから、子供が寝ている間にもこうして働くらしい。

かなり若い。美人。なのに気取ってなくて、かなり気さくで…。

お姉ちゃんみたいな人。



「あれ、菜帆ちゃん、何かあった?いつもよりボーッとしてるけど」

「…そうですか?」

「うん。ちょっといつもと違う感じがする」



…あの人に告白されたから、少し動揺してるのかな…。

自分では、そんなに動揺した感覚なかったんだけど。



「…千聖さんは、お客さんに告白されたことってありますか?」

「告白されたの!?」



少し食い気味で、千聖さんが聞いてくる。



「…はい」

「もしかして、コーヒーチョコレート青年?」

「…あ、はい、多分」



そんなあだ名がついてたんだ…。


…ってあれ?



「千聖さん、その人知ってるんですか?」



あの人が来る時には、滅多に千聖さんはいないのに。

何でピンポイントで…?

しかも私は、他にも色んなバイト掛け持ちしてるのに、よくここのバイトだってわかったな…。すごい。



「知ってるもなにも、彼、前まで昼間に来てたのよ。あ、私、昼間もシフト入れてるんだ。で、ある時からめっきり来なくなったと思ったら、夜の方のシフトの時、早めに来たらいるんだもの。びっくりしたな~」

「そうなんですか?」

「うん。で、時々早めに来る時は必ずいるんだもん。理由は最初、わからなかったけど。遠くから観察してたら、彼、ずっと菜帆ちゃんのこと見てるんだもん。あ、惚れてんだな、これ。って思ったよ」



まさか、千聖さんは気付いてたなんて…。


まぁ、私もずっとあの人見てるわけじゃないから、目が合わなくても全然不思議じゃないけど。


もしかして、本当に本気で告白されたのかな…。

なら、驚きすぎたとはいえ、あの反応は悪かったかな…。




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