君と二人の201号室
*
店を出ると、空が曇っていた。
…うわ、雨降りそう……。
「拓海さん、雨が降らないうちに帰りましょうか」
「うん。荷物は俺の自転車に乗せて。もちろん全部」
「いや、半分は私が……」
「なら俺は帰らない」
拓海さんはそう言ってそっぽを向く。
……子供ですか…。駄々っ子ですか…。
仕方ない…と思い、買ったものを全部、拓海さんのカゴに乗せる。
すると、拓海さんは高速で私の方を向き……ガン見してくる。
そっぽを向いたり、ガン見してきたり…。…忙しい人だな…。
「…なんですか…。言われた通り、荷物は全部預けましたからね?」
私がそう言うと、拓海さんは「してやったり」というような顔をした、何だか悔しい。
「…もういいです。帰りましょう」
「そーだね。あー、菜帆のその顔も可愛い。ずっと見てたい」
「運転中にそんなことしたら、危ないですよ……」
「菜帆が俺のこと心配してくれてる……」
…えっと……。なんか、感動してる?
いや、早く行かないと本当に雨降りそうなんだけど……。
「拓海さん、本当にそろそろ出発してくれませんか?雨降りそうです」
「菜帆を雨に濡れさせるわけにはいかないし、じゃあそろそろ行こっか」
「…一応言っておきますけど…後ろ向いたらダメですよ?」
「…はーい」
なんでそんな不満げな声なんですか……。
…そもそも、さっきの本気なんですか…?