君と二人の201号室





店を出ると、空が曇っていた。


…うわ、雨降りそう……。



「拓海さん、雨が降らないうちに帰りましょうか」

「うん。荷物は俺の自転車に乗せて。もちろん全部」

「いや、半分は私が……」

「なら俺は帰らない」



拓海さんはそう言ってそっぽを向く。


……子供ですか…。駄々っ子ですか…。


仕方ない…と思い、買ったものを全部、拓海さんのカゴに乗せる。

すると、拓海さんは高速で私の方を向き……ガン見してくる。

そっぽを向いたり、ガン見してきたり…。…忙しい人だな…。



「…なんですか…。言われた通り、荷物は全部預けましたからね?」



私がそう言うと、拓海さんは「してやったり」というような顔をした、何だか悔しい。



「…もういいです。帰りましょう」

「そーだね。あー、菜帆のその顔も可愛い。ずっと見てたい」

「運転中にそんなことしたら、危ないですよ……」

「菜帆が俺のこと心配してくれてる……」



…えっと……。なんか、感動してる?

いや、早く行かないと本当に雨降りそうなんだけど……。



「拓海さん、本当にそろそろ出発してくれませんか?雨降りそうです」

「菜帆を雨に濡れさせるわけにはいかないし、じゃあそろそろ行こっか」

「…一応言っておきますけど…後ろ向いたらダメですよ?」

「…はーい」



なんでそんな不満げな声なんですか……。

…そもそも、さっきの本気なんですか…?



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