君と二人の201号室





マンションに着いて部屋に入ると、しばらくしてから雨が降ってきた。

…よかった…。間に合って。


この雨に降られてたら、私たちだけじゃなくて、買ったものまで全滅するところだったんだろうな…っていうような勢い。

…本当、よかった。



「拓海さん、間に合ってよかったですね!」

「…本当、菜帆が濡れなくてよかった。でも、水に濡れて寒がってる菜帆も見たかった。うん、どっちにしてもいいな」

「あの、拓海さん…?さっきから、どうしたんですか?」



スーパーを出た時あたりから様子がおかしいのは…気のせいじゃないよね、うん。

…気のせいだと思いたいけど。



「いや~、我慢できなくなっちゃったから、これからは本心曝け出していこうかと思って」

「…今までは、本心じゃなかったんですか?」

「噓はついてないけど…。隠してたかな」

「もういいんですか?隠さなくても」

「うん。菜帆への愛を全部伝えようかなぁ~と思って」



…なんでだろう。とてつもなく疲れそうな気がする。私が。

…気のせいだと思いたい。…って、今日そう思うこと多いな…。



「菜帆、好きだよ?」

「…はい……?」



どうやら、気のせいではないらしい。

…なんか、デジャブ?



「うん、ちょっと困ったような顔も可愛いね」



ちょっとじゃなくて、結構困ってます。



「…拓海さん、今何時ですか?」

「スルーされたけど…そんなことする菜帆も好きだよ」

「何時ですか?この後バイトなんです…」

「今、1時40分だよ」



噓、それはまずい。買ったものも冷蔵庫に入れないといかないのに。

…あと、20分。

…急いで仕舞って、急いで出なきゃ。



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