君と二人の201号室
*
マンションに着いて部屋に入ると、しばらくしてから雨が降ってきた。
…よかった…。間に合って。
この雨に降られてたら、私たちだけじゃなくて、買ったものまで全滅するところだったんだろうな…っていうような勢い。
…本当、よかった。
「拓海さん、間に合ってよかったですね!」
「…本当、菜帆が濡れなくてよかった。でも、水に濡れて寒がってる菜帆も見たかった。うん、どっちにしてもいいな」
「あの、拓海さん…?さっきから、どうしたんですか?」
スーパーを出た時あたりから様子がおかしいのは…気のせいじゃないよね、うん。
…気のせいだと思いたいけど。
「いや~、我慢できなくなっちゃったから、これからは本心曝け出していこうかと思って」
「…今までは、本心じゃなかったんですか?」
「噓はついてないけど…。隠してたかな」
「もういいんですか?隠さなくても」
「うん。菜帆への愛を全部伝えようかなぁ~と思って」
…なんでだろう。とてつもなく疲れそうな気がする。私が。
…気のせいだと思いたい。…って、今日そう思うこと多いな…。
「菜帆、好きだよ?」
「…はい……?」
どうやら、気のせいではないらしい。
…なんか、デジャブ?
「うん、ちょっと困ったような顔も可愛いね」
ちょっとじゃなくて、結構困ってます。
「…拓海さん、今何時ですか?」
「スルーされたけど…そんなことする菜帆も好きだよ」
「何時ですか?この後バイトなんです…」
「今、1時40分だよ」
噓、それはまずい。買ったものも冷蔵庫に入れないといかないのに。
…あと、20分。
…急いで仕舞って、急いで出なきゃ。