君と二人の201号室
「店員さーん、ちょっと来てくださーい」
「あ、はーい」
お客さん(もとい、拓海さん)に呼ばれた私は、急いで店内へ向かった。
着くと…拓海さんは笑ってる。
え、なんで……。
「菜帆が俺のために急いで来てくれた…」
「え…っと…?」
うーん、何のために呼ばれたんだろう、私。
いや、本当に。
「…お会計、ですか?」
「菜帆は、今日のシフト、いつまで?」
「…お答えできません。業務中なので」
「コンビニでは答えてくれたくせに?」
うっ、痛いところを突いてくる…。
あの時は、ついうっかり…放心状態だったし…。
「なっるほど~。菜帆ちゃん、今だけ業務から外れていいよ~」
「…店長」
…面白がってる、面白がってるでしょ、絶対…。
そのニヤニヤした顔、何だかイライラするのでやめてください。
「6時まで、です…」
「じゃあ、それまで待ってるね」
「…あと、3時間半はありますけど」
「菜帆ちゃん、バイト早く上がってもいいよ~。お給料変えないし」
いや、それはダメでしょ。
そう思って店長をしばらくジーッと見ていると、店長は目を逸らし、私の腕は引っ張られた。
振り向くと、そこには不機嫌な顔をした拓海さん。
あ、これ、拗ねてるやつだ…。