君と二人の201号室


「じゃあ、帰ろっか」

「いや、待ってください……!」

「なに、嫌なの?」

「当たり前です!」



…そんなシュンとしても、私はもう騙されませんからね。



「なんで?やっぱり俺より、イケメン店長がいいんだ?菜帆は」

「そうじゃなくて…!お金貰うからには、ちゃんと働きたいんです!」

「じゃあ、お給料引いとく?」



店長がケロッとした顔でそう言う。

いや、そもそもさっきと言ってること違うじゃないですか。



「いや、お金は必要なんで」



とりあえず、そう答えておく。

…実際必要だし。



「菜帆は真面目だねぇ」

「普通です。当たり前です」



常識です、そんなこと。

…私の中の常識と、他の人の常識は違うんだろうけど。

いや、でもやっぱり…。



「なら、やっぱり待ってようかな」

「いや、そんな…」

「うん。てゆーか待ちたい。待つ。決定」



そんな勝手な…。

店長、どうか許可なんか出さないでください!



「うん、いいんじゃない?」



…ですよね…。

店長のことだもん。

わかってたけど…。



「…でも、今日はもう店閉めようかなって思っててさ。弟の誕生日だから」

「……そうだったんですか…」



あぁ、なんてこった。



< 39 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop