君と二人の201号室
「なんで?」
顔を逸らしても、すぐにまたジッと覗き込まれてしまう。
観念しな、とでも言われてるみたいだ。
「…恥ずかしいから……」
…声にすると余計にダメだ。何これ、もう本当に恥ずかしい。何の罰ゲームですか、これ。
何も言わない拓海さんが気になり、拓海さんの顔を見ようと、拓海さんの顔を覗き込む…と、顔を真っ赤に染めている。いや、あの、私も多分赤いと思うんですけど。
…なんで、拓海さんが?
「菜帆、可愛い。…可愛すぎる。犯罪だね、うん」
「…何か、やらかしましたか、私」
「いや、大丈夫。いや、だいじょばない。俺が。完全に危ないヤツだね、俺」
…今さら気付いたんですか…。遅い…。
…でも、拓海さんなら、危ない人でもなんでもいいですよ。
「…拓海さん、濡れるかもしれないけど、その…相合傘、しますか…?」
「菜帆の口からそんなこと言ってもらえるなんて…!もちろんするよ、相合傘。今日が相合傘記念日だね」
「なんですかそれ…」
結婚記念日じゃないんだから。
…というか、相合傘記念日なんかより、昨日の方が記念日だと思うけど…。同居記念日、とか?
って、こんなことを考えてるとか、拓海さんに毒されてるな私。完全に。
手に持っていた傘を拓海さんに取られた。
拓海さんは傘を開き、傘をさした。
…その傘には、私も入っている。一応。
「どうしたの?菜帆。もっと近づかないと濡れちゃうよ」
「いや、でも…」
この距離でもかなり近い。私と拓海さんとの間は30センチくらい。パーソナルスペースには入っている。
まごまごしていると、拓海さんに腕を引っ張られる。距離、約10センチ。
心臓の音を、誤魔化せない。
私今、すごくドキドキしてる――なんて可愛らしいモノローグなんかじゃなくて、心臓がすごくドクンドクン…むしろ、ドッカンって爆発しそうな勢いだ。