君と二人の201号室


「小悪魔、め」

「え!?」



小悪魔って、なにそれ…。意味がわからないです…。



「菜帆…誰でもそんなこと言うの?」

「言いません…」

「店長とかにも言うの?」



店長…?

いや、別に…。



「言いませんよ…?」



なんで、そこで店長が出てくるんだろう。



「菜帆、一つ聞いていい?」

「なんですか?」



既に色々聞かれてることは、ツッコまないでおこう。



「俺のこと、好き?」

「…好きですよ?」

「恋愛感情で?」

「それが、わからなくて…」



小説を読んだりして、どんな感情なのか知ってはいるつもりだけど、いざ自分が当事者になると、全くわからない。

…今まで周りに人なんかいなかったから、これがただの友達としての『好き』なのか、恋愛の意味での『好き』なのかがわからない。比べられないから。



「なら、教えてあげよっか…?」

「へ…?」



少しだけ熱を帯びたような瞳で、拓海さんが見てくる。

それが、なんだか色っぽくて、無駄に私をドキドキさせる。



「…目、閉じて。嫌だったら殴っても蹴ってもいいから…」

「こう、ですか…?」



私が目を閉じると


――唇が温かくなった。柔らかい感触とともに。



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