君と二人の201号室
「あ…の、さっきの返事なんですけど…」
「はい…」
年齢はおろか、名前も知らない彼がちょっと緊張したように返事をするものだから、返事をしようとしている私にも、変に緊張が移りそうだ。
「…気持ちはありがたいんですけど…。ごめんなさい。私はあなたのこと、何も知らないので…。強いて言うなら、よくコーヒーとチョコレートを買っているということくらいなので…。だから、もしよかったら友達から始めませんか?私たち」
私のありったけの勇気を振り絞ってそう言ったけど、彼の顔は見られなかった。
恥ずかしかったのと、その…振ってしまう申し訳なさ?というか…。
何も言われないので、恐る恐る顔を上げると…
そこには嬉しそうな彼がいた。
「えっと…?」
「嬉しいです」
「え?」
「つい、勢いで言ってしまったので、気持ち悪がられて終わりかと思いました。だから、嬉しいです。やっぱり、優しい人ですね」
そんな背景があったとは…。
…というか、気持ち悪がられるって……。
ネガティブ?
いや、でも最近の周りの子とかはそうなのかな…。
「あの、とりあえず、連絡先教えてもらえますか?」
「ごめんなさい。それは出来ません」
彼がおずおずと聞いてきたのに、私は『連絡先』という単語を聞いて即座に頭を下げる。
「…ごめんなさい。やっぱり、急に気持ち悪かったですよね」
「あ、あの、そうじゃなくて…!」
何やら誤解をしているようなので、焦りつつもその考えを真っ向から否定する。
「…………え?」
「驚くと思うんですけど、私、高校生なんです」
「…そう見えるので、驚いたりはしませんよ…」
高校生が易々と他人様に連絡先を教えてはならない。と、いうことを考えているわけではないし、ましてや、箱入り娘でもない。
連絡先と聞かれて、家の電話番号を教える人もいないだろう。
それを差し置いて、だ。