君と二人の201号室
「私、携帯電話、持ってなくて…」
「あ、なんだ、そういうことか…。良かった…。それもダメかと…。なら、家の電話番号…教えてもらえたりする?それとも、俺の電話番号を教えたら、電話かけてくれる?」
「それもごめんなさい」
「…やっぱり、迷惑か……」
「そうじゃないんです!」
またもや誤解している彼に、私はもう一度すっぱりと否定の言葉を言う。
どうしよう、私の事情、どこまで話そう…。
「…うち…というか、私、極貧で。電話とかなくて。まぁ、なくても生活出来ていたので、特に買おうとも思わなかったし、実際買えないんですけど…。あはは…」
自分のことなのに、話しているうちになんだか情けなくなってきたので、力なく笑ってみたら、虚しさが増しただけだった。
知らない人に、何暴露してるんだろ、私。
「…家は、どの辺ですか?」
「…遠くはないです」
私が言葉を濁したのを聞いて、彼は思い出したように言った。
「あ、ごめん!俺、まだ名乗ってなかったよね…?」
「はい…」
「ごめん、ほんと。名前も知らない男に住んでるところ聞かれたら、さすがに怖いよね…。本当にごめんなさい」
「いや、まぁ大丈夫だけど…名前は知りたい、です」
噓をつくのもなんだかなぁ、と思ったので、とりあえず正直に言ってみた。
「えっと…俺は八代拓海です。年は、18歳。今年で19歳になるけど。洋服やアクセサリーなんかを扱ってる店で働いてます」
「え、あ、じゃあ私も…。あの…柴田菜帆です…。高校1年生、15歳…。です」
お互いに軽い自己紹介を済ませた。やっぱり、いい人そうだ。
…というか、18歳だったんだ…。
働いてるから、社会人って言ったら社会人だけど…。見た目通りの年だった。