君と二人の201号室
「ホワイトクリスマスって、ロマンチックだよね」
「!」
ちょうど思っていたことを言われてドキッとした。
いや…落ち着け…たまたまだ…!
「拓海さんもやっぱり、そう思いますか?」
「だって、綺麗じゃん。雪って」
「そうですね」
なんとなく、男の人はそういうの興味ないのかと思ってた。ちょっと意外かも。…我ながら、偏見だよなぁ。
「私、昔、雪って食べられるものだと思ってました。美味しそうだなぁって」
「まぁ、食べられなくはないよね…」
運転してる中、苦笑いする拓海さん。
…なんか、気を遣わせたかな。
「で、ある日、食べてみたんです」
「…小さい子は、一度くらいはやるよね…」
「はい。…氷でした。すぐに溶けちゃう、氷。あっけないなぁ…って思いました。その時私は、自分で生きることを決心しました」
「話が飛躍しすぎじゃない?というかそれ、いつの話?」
「5歳くらいだった気がします」
あの時の私は、雪は綺麗なものだと思ってた。今でも綺麗だとは思うけど。
雪は、キラキラしてて、綺麗で、みんなを幸せにしてくれる。
…でも、そんな雪の正体は、すぐに溶けちゃう、小さい小さい氷の粒。
その時、憧れていたもののちっぽけさを知った。
…今思うと、幼いながら、擦れた子供だなぁ…としみじみ思う。
「でも、氷でもいいじゃん」
「え…?」
「氷でも、束の間の夢を見せてくれたんでしょ?…それは、噓にしなくてもいいと思う」
そう言って、拓海さんは前を向いたまま笑った。