君と二人の201号室





車で来たおかげで、潮騒公園には15分程度で着いた。

着いたのは早かったけど、やっぱり人がたくさんいる。



「はぐれないように、手、つなごっか」

「…はい」



差し出された手を、少し遠慮がちに握る。

手袋をしていても、私の体温が伝わりそうだ。


未だに拓海さんにドキドキしてしまう私は、おかしいのだろうか。

いつまで経っても慣れる気配がない。



「わぁ…綺麗…」



潮騒公園は、海のそばにある。だから、潮風が吹き付けて、寒い。


その寒さが心地よく感じるほど、優しく明るく暖かい光が、大きなクリスマスツリーをさらに美しく飾り、観ている人たちを幸せそうにさせている。

ツリーの緑色と、カラフルなライトアップ、さらには降りつける雪。

…ほんとに、きれい。



「…ふふ。よかった。そんなに嬉しそうにしてもらえるなんて。連れてきたかいがあったなぁ。車のサプライズも成功したし♪」

「ほんと、びっくりしたじゃないですか~!」



サプライズだったんですか、それ。

でも、本当に驚いたなぁ。

「一緒に暮らさない?」発言に次ぐ、びっくり発言だった。



「いや~。想像以上に可愛い反応してくれたなぁ」

「なっ…」



か、可愛いって…。言い過ぎじゃないかな。

拓海さんの「可愛い」は「おはよう」とか「こんにちは」とかと同じレベルかもしれないけど、免疫がない私にとっては心臓の毒でしかない。




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