君と二人の201号室
*
「菜帆、着いたよ」
「ん…」
目を閉じただけのつもりだったのに、いつのまにか眠っていたらしい。
「ほら、起きて。着いたから」
「…え…?」
「ほら」
そう言って指さされた先を見ると、立派な一軒家。
…いや、立派なんてレベルじゃない。豪邸だ。すごすぎる。
拓海さんの親って、何してる人なんだろう…?
「でっかいですね…」
「そう?まぁ、普通の家に比べたらちょっと大きいかも」
ちょっとなんてレベルじゃないですよ。
すごい大きいと思いますが。
「行こうか。あの人たち待ってるだろうし」
「はい…。緊張します…」
「多分、最初だけだから大丈夫」
最初だけ…?
…親しみやすい人たちだから、すぐに慣れるっていう理由とかかな?
まぁいっか。
とりあえず、覚悟を決めなきゃ!
…緊張って、どうしたらしなくなるんだろう。いや、全く緊張感がないのも、それはそれでダメだと思うけど。
拓海さんに連れられて、車を降りて玄関まで向かった。庭も広い。なぜ。…公園並みにある気がする。
よく周りを見ると、たくさん木が植わっていて、益々公園みたいだ。
…ところどころに、庭師さんみたいな人がいるから、やっぱりお金持ちなんだろうなぁ…と、改めて思う。
……なんか余計、心配になってきた…。
貧乏生活を続けてきた私には、いきなりハードルが高すぎるよ……。