君と二人の201号室
「…皆さんは、何で初対面の私に、こんなによくしてくれるんですか?」
ずっと疑問に思ってた。
いくら拓海さんが信頼されていても、ここまで歓迎されるものなのか…って。
もしかしたら、このくらいが普通なのかもしれないけど、私には正直、到底理解できそうにない。…というより、どうしても緊張してしまうだろう。
多分本当だったら今も緊張してるだろうけど、瞳さんの行動がぶっ飛びすぎていて、そこまで追いつけていないのが現状だ。
「なんで、かぁ~。初対面じゃないよ?少なくとも私は」
「え?」
「覚えてないかぁ~。そりゃあそうだよね」
何の話だろう。
「昔ね、私と拓海、散歩してたんだけどね。そのとき拓海が盛大にコケて、大泣きして。で、そのとき、たまたま通りがかった女の子…拓海よりも明らかに小さい女の子が、高い絆創膏差し出して。『これつけると、いたいのなくなるの!』って言ってさ。…感動したわ」
「それ、」
「しかもその子、どうやらおつかい帰りらしくて、洋服もボロボロなのに。よっぽどのことじゃないと使わないだろうその絆創膏を、赤の他人のために渡して。去って行った…っていう」
…もしかしなくても
「それって、菜帆ちゃんでしょ?」
すっかり忘れてたけど。いや、今でも正直、半分忘れてるけど。そんなことがあったなぁ…って思った。そっか、あれって拓海さんと瞳さんだったんだ。
「…きっと、そうです」
「菜帆ちゃん。君は拓海の初恋の子なのだよ」
…噓でしょ…。それって多分、かれこれ10年くらいも…。
ん?待って。
拓海さん、あの時「一目惚れ」って言ったよね?噓ってこと?なんで。
「その話を知ってたから。私も両親も。そして、学生時代の拓海は、女嫌いだったのだよ。それがまぁ、こんなにデレデレするとはねぇ…」
瞳さんは遠い目をして語る。