君と二人の201号室
*
「さっぱりした~」
…私は「緊張した~」の方がしっくりきます。
どこの高級旅館ですか!?…っていう感じだったし。…ランクが上がった。
「菜帆…おかえり。姉貴に何かされなかった?大丈夫?襲われたりしなかった?」
「何もないですよ…?」
「そうそう。すごい仲良くなったんだよね?私たち」
「…はい…!」
拓海さんの前でもそう言ってもらえて嬉しくなった。
…こんなに小さいことで舞い上がるなんて、なんだからしくないな…と思う。
でも、らしくない自分でも、いいなって思う。
「あの、拓海さん…?」
「はっはーん。さては、拗ねてるんだな、拓海」
「…それが何か?」
え、瞳さんに向かって?
…間違っても、恋愛感情は生えないのに?
「拓海さん、可愛いです…」
「だって!確かに、可愛いなぁ~。拓海」
「嬉しくねぇ…」
…そっか。男の人に「可愛い」はナシか。
あんまり深く考えてなかった。
「菜帆ちゃん、そこのバカ弟のことはほっといて、一緒に紅白観ようね~」
「拓海さん、すみません!瞳さんと約束したので!」
「…俺も観る」
「あんたはさっさと風呂入ってこいよ」
…瞳さんって、「黙ってれば可愛い」の典型的な例だよなぁ。失礼だし、口を開いてても可愛いんだけど。