君と二人の201号室


瞳さんがテレビをつけると、年末の特別番組がわちゃわちゃとやっていた。少し、五月蠅いくらいに。

大晦日だから、当たり前だけど。



「あれ、ご両親は……?」



さっきから感じていた違和感。

お風呂を上がってから、拓海さんのお父さんとお母さんの声が聞こえない。

リビング(めっちゃ広い)に来ても、姿が見当たらない。



「年末は毎年、母さんの好きなアーティストのコンサートに行ってるの。気にしなくていいよ」

「そうだったんですか…」



理由を聞いて一安心。

何かあったとか、やっぱり私のことが嫌だったとかじゃなくて。



「ほら、菜帆ちゃん!ちょうど紅白始めるよ!」



ワクワクしながら瞳さんが言った。

なんだか小さな子供みたいだ。…もともと子供っぽいけど。…って言っちゃ悪いか。



「おおー…初めて観ました…」

「噓!?私なんか、毎年観てるよ!?」

「年越しそばなら、毎年食べてましたけど…」

「ふふ~。紅白デビューだね☆」

「…それって、テレビに出る人に使う言葉じゃないですか?」



ところどころ、言葉の使い方がおかしい気がする。…気のせいじゃないはず。



「…ところで、この番組って、何時くらいまで放送されるんですか?」

「ふっふっふ…日付が変わるか変わらないかギリギリの時間まで」

「そんなにやるんですか…」



なるほど、それなら人気があるのかもしれないな。

だって、こんなに寒いのに、カウントダウンやらなんやらで、外に出る人もいるみたいだから。…本当に寒そう。

やっぱりみんな、新しい年を心待ちにしてるのだろうか。知らないけど。



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