君と二人の201号室





「妹だって、菜帆。あなた、今日からお姉ちゃんよ!」



私が6歳の春、赤ちゃんが産まれた。


…正直に喜べない。


やっと産まれたか…っていう気持ちと、産まれちゃったか…っていう気持ち。

両方がごちゃ混ぜになってる。


嬉しくならなきゃいけないのに。

…ダメなお姉ちゃんだなぁ、私…。



「菜帆、どうしたの?」

「…ううん、なんでもない。おめでとう、お母さん」



きっと今の私は、ものすごく下手くそな笑顔になってるんだろうな。

でも、そんなこと、きっと誰も気付いてくれない。

…いいんだ、それで。私が我慢すれば、私が頑張ればいいことだから。


お母さんはやっぱり、気付いてない。

当たり前だよね。さっきから全然、こっち見てくれないもん。


赤ちゃんに向かって、ニコニコ笑ってる。


だいきらい


いなくなればいいのに…なんて思っちゃう自分が。

キライ、キライ、キライ。

いっそのこと、私がいなくなればいいのに。きっと最初から、要らないのは私の方だ。

自分で考えたくせに、自分で悲しくなる。でも実際、本当のことなんだろうな。



「ふふ~。優しいお姉ちゃんがいて、よかったね~」



お母さんは、赤ちゃんに向かってそんな風に語りかける。

…『使いやすい』の間違いなんじゃないのか…と、思ってしまう。

『優しい』って言葉は、便利な言葉だ。相手を縛ることだってできる。




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