君と二人の201号室
*
「妹だって、菜帆。あなた、今日からお姉ちゃんよ!」
私が6歳の春、赤ちゃんが産まれた。
…正直に喜べない。
やっと産まれたか…っていう気持ちと、産まれちゃったか…っていう気持ち。
両方がごちゃ混ぜになってる。
嬉しくならなきゃいけないのに。
…ダメなお姉ちゃんだなぁ、私…。
「菜帆、どうしたの?」
「…ううん、なんでもない。おめでとう、お母さん」
きっと今の私は、ものすごく下手くそな笑顔になってるんだろうな。
でも、そんなこと、きっと誰も気付いてくれない。
…いいんだ、それで。私が我慢すれば、私が頑張ればいいことだから。
お母さんはやっぱり、気付いてない。
当たり前だよね。さっきから全然、こっち見てくれないもん。
赤ちゃんに向かって、ニコニコ笑ってる。
だいきらい
いなくなればいいのに…なんて思っちゃう自分が。
キライ、キライ、キライ。
いっそのこと、私がいなくなればいいのに。きっと最初から、要らないのは私の方だ。
自分で考えたくせに、自分で悲しくなる。でも実際、本当のことなんだろうな。
「ふふ~。優しいお姉ちゃんがいて、よかったね~」
お母さんは、赤ちゃんに向かってそんな風に語りかける。
…『使いやすい』の間違いなんじゃないのか…と、思ってしまう。
『優しい』って言葉は、便利な言葉だ。相手を縛ることだってできる。