君と二人の201号室





7歳、小学校一年生の、春。


家族で、遊園地に行こうという話になった。

…嬉しかった。純粋に。


妹はまだ1歳だったから、私の方が遊園地を楽しめると思った。

…親が私に構ってくれないのは、もう慣れた。

私が我慢すれば、それでいいから。


私は、ウキウキしながら車に乗った。



――遊園地に行く途中、事故に遭い、妹は帰らぬ人となった。







お母さんは、うつ状態になった。

ものに当たるようになった。


…もちろん、そのとき、一番責められたのは私だった。



「あんたが死ねばよかったのに」



その言葉は、深く、重く、幼い私の心を壊すには充分だった。


妹が死んだとき、悲しかったけど、きっと心のどこかで思ったんだと思う。

「あぁ、これで私が大切にしてもらえる」…って。

酷いお姉ちゃんだな。


本当に、いっそのこと、私が死んじゃえばよかったのに。

要らなかったのは私の方なんだから。


家庭内暴力…?

そんなの当たり前。

だって、要らないものは傷つけられてもいいんでしょ?

身体に残る傷じゃなかったのが、不幸中の幸いかもしれない。


…お父さんは、見て見ぬふり。

日に日に私の身体に傷が増えていっても、心配するのはお母さんのことばっかり。

段々お父さんまで、仕事でイライラしたら私に当たる始末。


この頃私は、何も感じなかった。

文字通り、何も。

痛い、辛い、悲しい、寂しい、怖い、怒り。


――当たり前だ。

壊れてるんだから。




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