夢への一歩
■医局

優が医局に戻ると、麻友子がパソコンに向かい合っていた。
絵莉の治療法を探していると思った優は静かに自分の席についた。

麻友子「かいと君の様子はどう?」

優が医局に来たことに気づいたのか、麻友子は優に聞いた。
一旦パソコンを閉じていた。

優「来週には退院できそうかな?」

嬉しそうに優は言った。
その様子をみて麻友子は微笑んだ。

麻友子「よかったね」

優「ああ」

麻友子「私、決めたんだ」

麻友子は、真面目な様子で優に言った。

優「何を?」

麻友子「絵莉ちゃんの外泊許可」

絵莉が目覚めたら、本人に聞いて希望があれば許可を出すらしい。

優「そっか」

麻友子の決断を応援する優であった。

■カフェ

マスターと佐々木教授は、昔話で盛り上がっていた。

マスター「あっあれだろ?」

佐々木教授「勤務初日で、階段で転けて骨折したやつかい?」

マスター「そうそう」

この出来事は病院内で噂になったことを思い出して、二人は盛り上がっていた。

佐々木教授「指導医からかなり怒られたよ」

マスター「患者を治す医者が怪我してどうする?」

佐々木教授「医者でも怪我しますって言ったらなぜか怒られた」

二人の盛り上がりがピークを迎えたころ、カフェではみかけない医者の団体が表れた。

どうやら院長がカフェに訪れたらしい。

マスター「院長」

佐々木教授とマスターが院長に頭を下げる。

院長「佐々木教授に話がありまして」

佐々木教授「なんでしょう」

話の内容は、佐々木教授の娘を院長の息子であるかいとの許嫁にしたいというものだった。

政略結婚である。

院長「息子の受験が来月にありまして、それが終わり次第進めていこうかと」

おそらく断れば、この病院から干されるだろう。

そう思い、かいとの両親は院長の指示に従った。

院長「では、よろしくお願いします」

そういうと院長は去っていった。

マスター「かいと君は絵莉ちゃんの事好きなんだ」

佐々木教授「そうなのか?」

鈍感である佐々木教授は二人の関係性に気づかなかった。

マスター「優君と麻友子ちゃんが話してるのを盗み聞きしたからさ」

盗み聞きはよくないけど、佐々木教授はそれよりも人の恋を邪魔した自分が許せなかった。

佐々木教授「悪いことしたな」

マスター「恋の試練というやつだな」

しばらく、カフェは静かになった。


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