王子様は甘いのがお好き
そして、今に至る…と言う訳である。

それまでふさいでいた社長の唇が私の唇から離れた。

社長が私にキスをしていた時間は長かったと言えば長かったし、短かったと言えば短かったと思う。

「――しゃ、社長…?」

突然キスをされた理由がわからなくて戸惑っていたら、社長はフッと笑った。

「せっかくの美しい髪を束ねてしまうのはもったいない」

社長はそうささやくように言って、私の後ろへと手を伸ばした。

その手でするりと、ひとつにひっつめてまとめた髪を解かれてしまった。

ああ、せっかく時間をかけて頑張ったのに…。

彼に解かれてしまった髪はサラリと私の肩に落ちたのだった。

「こんなにも美しい髪に出会えたのは、君が初めてだよ」

社長がそんなことを言ったかと思ったら、
「――ッ…」

また唇をふさがれたのだった。
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