王子様は甘いのがお好き
久保田さんはハッと何かに気づいたような顔をすると、
「ううん、何でもないから」
と、首を横に振って答えた。

何が“何でもないから”なんだろう?

「それよりも、その髪型は…」

「あの、変でしょうか?」

そう聞いた私に、
「変とか似合わないって言う訳じゃないんだけど…」

これ以上は言いたくないと言うように、久保田さんは口を閉じた。

変とか似合わないんだったら、何だって言うのかしら?

私が首を傾げたら、
「社長にあいさつに行かなくてもいいの?」

久保田さんに声をかけられた。

「えっ…ああ、そうでしたね」

私は社長の秘書を務めることになったので、彼にあいさつをしに行かないといけない。

これも何でなのかよくわからないけれど、社長たってのご希望らしい。
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