王子様は甘いのがお好き
我が社長ながら、ずいぶんと希望が多い人なんだな…。

そう思いながら私は秘書課を後にすると、その隣の社長室へと足を向かわせた。

コンコンと目の前の重厚そうなドアをたたいたら、
「どうぞ」

中から声が聞こえた。

「失礼します」

私は声をかけると、ドアを開けて中に足を踏み入れた。

社長は椅子に座っていた。

さすが、“王子様”と周りに称されているなと思った。

座っているだけなのに絵になるとは、まさに彼のことを指差すのだろう。

社長はじっと私を見つめてきた。

その瞳に飲み込まれそうになっている自分に戸惑いながら、
「本日から社長の秘書を務めさせていただきます、佃と申します」

私は自己紹介をすると、ペコリと頭を下げた。
< 26 / 120 >

この作品をシェア

pagetop