王子様は甘いのがお好き
その様子を見ていたら、
「――社長はそれで満足ですか?」

私の口から自分の気持ちがこぼれ落ちた。

「えっ?」

社長は訳がわからないと言った様子で聞き返すと、私の顔を見つめた。

「社長は、髪にさわっているだけで満足なんですか?」

我ながら何を言っているんだろうと思った。

でも髪の1本1本を楽しんで確かめている社長に対して、もう我慢ができなかった。

髪以外で他に好きなものはありますか?

髪の毛ばかりじゃなくて、私を見てくれませんか?

もっと、あなたのことが知りたいんです。

そんなことばかりが私の胸の中を支配していた。

思わぬことを言われて戸惑っている社長に向かって自分の手を伸ばすと、頬に触れた。
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