王子様は甘いのがお好き
柔らかくて、触り心地がいい頬だと思った。

「社長が知りたいんです…」

私はそう呟いた。

「そ、それは困るな…」

社長は呟くように言い返した。

「どうしてですか?」

そう聞き返した私に、
「僕は君じゃなくて、君の“髪”が好きなんだ」
と、社長が答えた。

「僕のことを知りたいなんて言われたら困るよ」

「髪の毛にさわっているじゃないですか」

私がそう言い返したら、
「知りたいのは髪の毛で充分だと思ってる。

それで僕は満足だから」

社長がさらに言い返した。

「私は不満足です」

私は言い返した。

「社長はそれでいいかも知れないですけど、私はそれでは嫌なんです。

もっとあなたのことを知りたいんです」

私は社長を見つめた。
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