王子様は甘いのがお好き
「何も考えていなかったのかい?」

社長につめ寄られたので、
「す、すみません…」

条件反射で謝ってしまった。

「君は悪い子らしいね」

社長がクスッと笑いながら言ったかと思ったら、
「――ッ…」

唇をふさいできた。

肉づきがいいその唇に意識が落ちそうになったけれど、すぐに唇が離れた。

「――何も考えないで、ただ僕のことを知りたいなんて」

社長はそう言うと、キスをしたその唇を自分の指でなぞった。

「――社長が髪ばかりに固執しているので、それで満足なのかと思っただけで…」

「満足だよ」

…やっぱり、社長は社長だった。

「理想の髪が僕の目の前にあるんだもの。

それを目や手で、時には唇で堪能することに僕は満足しているよ」

社長は笑った。
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