王子様は甘いのがお好き
その日の昼休みが終わった後、私は社長室に呼び出された。

「へえ、佃さんは3人姉弟なんだ」

そう言った社長に、
「4歳上の姉と4歳下の弟がいます。

姉は小説家で、弟は大学生です」

私は言い返した。

「なるほど」

社長は返事をすると、愛しそうに私の髪をなでた。

「お姉さんは本名で小説を書いてるの?

それとも、ペンネーム?」

「読みたいんですか?」

そう聞いた私に、
「多少の興味はある」

社長は答えた。

多少の興味と言った社長に、私の胸がチクリと痛くなった。

読みたいから聞いただけなんだと、私は自分に言い聞かせた。

「佃さん?」

社長に名前を呼ばれて、ハッと我に返った。

そうだ、話の途中だった。
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