王子様は甘いのがお好き
「終わった…」

時計に視線を向けると、後少しで8時になるところだった。

当然のことながら周りは誰もいなかった。

秘書課にきてから初めて残業をしたなあ…。

そう思いながら帰り支度をしていたら、
「ご苦労様」

聞き覚えのある声が聞こえたので視線を向けると、社長だった。

「あ、社長…」

社長はニコッと笑うと、
「秘書課に電気がついていたから誰かいるのかなって思って」
と、言った。

「少し残業をしていたんです…。

もう終わったので帰るところです…」

胸の中をずっと支配していた彼が目の前にいることもあってか、私の心臓がドキドキと鳴り出した。

「お疲れ様」

社長はキョロキョロと周りを見回すと、
「もう誰もいないんだよね?」
と、聞いてきた。
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