王子様は甘いのがお好き
そんなことを思っていたら、
「佃さんに勝る相方がいないんで」

田原が言った。

「はあっ?」

思わず聞き返した私に、
「やっぱり、佃さんと組んだ方がしっくりくるなあって」

田原はそんなことを言った。

…それはつまり、私以外の人間とコンビを組みたくないから1人で仕事をしてるって言うことだよね?

「佃さんが営業に戻ってくれたら、僕としても嬉しいんですけどねえ」

田原は笑いながら、そんなことを言った。

何こいつ、バカなの?

ああ、バカだから当然のことか。

バカだから人の気持ちがわからないんですね。

「…もう戻らないと思いますから」

ボソッと呟いたけど、
「えっ、何ですか?」

田原の耳には入っていないようだった。
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