王子様は甘いのがお好き
何だか、まるで社長とつきあっていたと言うような言い方だ。

もしかして、彼女が久保田さんが言っていた例の人なの?

「君も幸せそうでよかったよ」

社長が速水さんに言った。

「もうすぐで子供が生まれるの」

速水さんはフフッと笑いながら言うと、愛しそうにふくらんでいるお腹をなでた。

「そうか、それはよかったよ」

その様子に社長はホッとしたようだった。

「それじゃあ、僕たちはこの辺で」

「はい、また」

2人は会釈をするように頭を下げると、その場から立ち去った。

私は社長の後を追うように、その場から離れた。

少しだけ歩くと、
「何も聞かないのかい?」

社長が声をかけてきた。

「…久保田さんから、お話はうかがっています」

そう言った私に、社長は気づいたようだった。
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