王子様は甘いのがお好き
周囲から“ゴールデンコンビ”だ“結婚間近の恋人同士”だと呼ばれて、田原は何を勘違いしたのか私に好意を寄せてきた。

何かあるたびに先ほどのように“飲みに行きましょう”だのなんだのと抜かしていると言う状況だ。

一方的過ぎる彼の好意を迷惑だと思っている私は、波風が立たない程度にいろいろとごまかして断っていると言う訳だ。

「噂もあるんだけどさ、あいつが私に好意を向けてきてるせいで全然彼氏ができないんだよね」

やれやれと息を吐いた私に、
「迷惑な話だよね。

もうこの際、思い切って社外で彼氏を作っちゃったら?」

七恵は言い返してきた。

彼氏とは2年前に別れて以来、それっきりである。

「その方がいいかもね」

私はうんうんと首を縦に振ってうなずいた。
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