王子様は甘いのがお好き
こいつ、どこまで話を知っているのよ…?

「何をしようって言うのよ。

社長のことを知って何になるって言うのよ」

そう言った私に、
「別に」

田原はバカにしたように笑って言い返した。

「ネタとしてはおもしろいなと思っていますけどね」

田原はスマートフォンをスーツの胸ポケットに入れると、椅子から腰をあげた。

「ちょっと…!?」

呼び止める私の声に気づいていないと言うように、田原はその場から立ち去ったのだった。

まさか、バラそうって言う訳じゃないわよね…!?

あの様子からして見たら、彼はそう考えているに違いない。

でもどうすればいいのだろうか?

「しまった、もう少しで昼休みが終わっちゃう」

私は早足でコーヒーショップを後にしたのだった。
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