王子様は甘いのがお好き
社長室にいるのは、私と社長の2人だけだ。

立場的には社長と秘書だけど、この瞬間は恋人同士だ。

社長は唇を離すと、
「――何かあった?」
と、聞いてきた。

「――えっ…?」

訳がわからなくて聞き返した私に、
「ここに戻ってくるまでに何かあった?」

そう聞いてきた社長に、私の躰が震えた。

「と、特には…」

そう答えた私に、
「そう、ならばいいんだけど…」

社長は問いつめてこなかった。

そのことにホッと胸をなで下ろしたら、社長はもう1度唇を重ねてきた。

「――ッ、んっ…」

その唇に感じていた時、デスクのうえの電話が鳴った。

「まだそんなにも時間は経っていないと思うんだけど…」

社長は首を傾げると、受話器を手に取った。
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