【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
まん丸に近い月が、夜空に浮かんでいる。

電車も早い時間に終わってしまったのか、昼間見えていた線路は暗闇の中で、遠くの民家の灯りがほんの少し見えるだけだ。静かな夜だった。

「星がこんなに見えるなんて、素敵」

わたしはウッドデッキのラタンのソファに座っていた。

隣にはもちろん駿也が座っていて、彼にもたれかかるようにしてご機嫌にシャンパンを飲んでいた。

「あんまり飲み過ぎるなよ」

「うん。じゃあ、次は食べることにする」

皆川議員との会食は和やかな雰囲気で無事に終わり、お互いの親交を深められた。

けれど緊張していたわたしはほとんど料理を食べることができず、それに気がついた駿也が旅館の人に言って、よく冷えたシャンパンと簡単な軽食を用意してくれたのだ。

「ん~美味しい。シャトーブリアンなんか食べたの初めてかも」

口の中でとろけるお肉は、食べやすいように一口サイズにカットされている。

わたしのためにもう一度、新しいものを作ってもらったようでまだ温かい。

咀嚼する間もなく口の中に溶けていった。

「あ~、ひよりが美味そうに飯食ってる顔見ると、すげーほっとする」

「何それ?」

ちょっと不満げに頬を膨らませた。
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