【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
第六章 兄の怒りと娘さんをください
第六章 兄の怒りと娘さんをください
到着ロビーで荷物を受け取り、ゲートを出ると一気に現実に引き戻された。
「あーあ。せめてもう一日ぐらい遊びたかったな」
「まあ、そう言うな。これからは行きたいところにいつでも一緒に行けるんだ」
「ん、そうだね」
焦ることなんて何もない。これからは駿也がいつもそばにいてくれるんだから。
隣を歩く駿也の手をぎゅっと握る。この手をずっと話さないでいよう。
ふたり見つめ合って微笑みを交わすわたしたちを、大きな声が引き裂いた。
「ひより! そいつから離れろっ!」
「えっ……お、お兄ちゃんっ! どうしてここに?」
驚いたわたしは、手に持っていたボストンバッグを落としてしまう。
そういえば出張だって言っていた。だから旅行のことも言ってなかったんだった。
声の方に顔を向けたときには、兄はすでに目の前まで来ていた。
そしてつないであったわたしたちの手を引き離し、わたしはあっという間に兄の背後へと引っ張られた。
「ひより、いったいどういうことだ。なぜこんなやつと一緒にいる?」
「それは……」
思わずだまりこんでしまう。
兄が皆川代議士の秘書にされたことを思い出すと、おいそれと復縁しましたとはいえない。
当時の兄の苦しみを知っているからなおさらだ。
しどろもどろのわたしに変って、駿也が兄の前に出て説明しようとする。