【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
「こいつが俺たちに何をしたのか、忘れたのか? お前をあんなふうに傷つけるようなやつ、俺は絶対に許さない。行くぞひより」

「え、ちょっと待って、痛いっ。離して」

わたしの手をすごい力で握り、引きずって歩く。

「駿也っ」

振り返ると駿也がこちらに駆け寄ろうとしていた。

しかしすかさず兄が彼に駆け寄ると、わたしの荷物を手にした。

その際ここからは聞こえないけれど、何か話をしているようだ。

眉間に深い皺を刻んで戻ってきた兄は「行くぞ」と言ったきり、何も話さないでわたしの腕を掴みふたたび歩き出した。

駿也の姿を振り返っていても、空港内に行き交う人々の波のなかに彼の姿は消えてしまった。



家にたどり着くまで、兄とは一言も話をしなかった。

お互いだまったままだったのに、自宅マンションに着くなり、ゴングが鳴ったかのごとくお互いの言葉の応酬が始まる。

「お兄ちゃん、いきなり駿也にあんな態度とるなんてひどいじゃない」

「なに言ってる、お前はまったく学習していないのか? また痛い目を見ることになるぞ」

断定する兄にくってかかる。

「駿也には駿也の事情があったの。たしかに四年前は傷ついてたくさん泣いた。
だけど再会して当時のことをちゃんと納得した上でお互いもう一度やり直すって話になったの」

わたしだって最初は許せないと思った。

だけど駿也がわたしの為にしてくれた努力を知ったら、もう一度好きにならずにはいられなかった。
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