【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
「お前は納得したかもしれないが、俺はまだ許してない。
一生許すつもりなんてないからな」
「お兄ちゃん!」
「家族のことなんてどうでもいいと思ってるのか?」
「……っ」
たしかに兄だって多大なる迷惑を被った。
関与先の突然増えた税務調査に顧客離れ、当時の兄は駆けずり回るようにして毎日仕事をこなしていた。
あのときの兄のことを思い出すと、言い返せなくなってしまった。
わたしのせいで迷惑をかけたのは間違いないのだから。
何も言い返せなくなってしまったわたしに兄は言い含めるようにして言った。
「わかったら、あの男とは二度と会うな! それでも会うっていうなら、家族の縁を切るからな」
兄はそのまま自室に向かってしまう。
「ちょっと待って……」
もう少し話をしたかったけれど、兄は拒否してさっさと部屋に入ってしまった。
「あ~、もう」
どさっとリビングのソファに座って、クッションを抱きかかえる。
すごく楽しい旅行だった。駿也のお父さんにも会えてふたりのことを応援してくれると言ってくれた。
お互いの心も体も強く結びついた素敵な時間だったのに、こんなふうな最後になるなんて。
兄の気持ちもわかるから、強気にはでられない。