【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
だけど……、わたしが駿也と離れることができないんだから、なんとか説得するしかないんだ。

兄の部屋からは物音ひとつ聞こえない。

早くなんとかしたいけれど、今日は話し合いにはならないだろう。

自分の部屋へ戻ろうと立ち上がったとき、バッグの中でスマートフォンが震えだした。

駿也だっ!

「もしもし」

わたしはできるだけ小さな声で応答した。

《ひより、大丈夫だったか?》

わたしは自室で話をしようと、移動しながら小声で話を続けた。

「うん、って言いたいけど、大丈夫じゃない」

《だろうな、あの剣幕からして――》

そこまで聞こえたあと、スマートフォンが手から奪われた。

後ろを振り向くとそこには兄がいる。

「誰と話をしてるんだっ? まさかあいつじゃないだろうな」

責めるように言われて、素直に相手を言えるわけがない。

だまったままのわたしを見て、兄は勝手に通話終了のボタンを押してしまう。

「ちょっと、何するの? さすがにやりすぎだよ」

「お前は、何もわかっていない。当分の間俺が電話は預かっておく」

そうわたしの前でぷらぷらさせているスマートフォンがまた鳴り始めた。

兄はすぐに画面を確認すると「チッ」と舌打ちをして、すぐに【拒否】のボタンをタッチして、そのまま電源を落としてしまう。

「ひどいっ! 返してよ」

「ダメだ。それからしばらくの間は、会社以外外出するのを禁止する。わかったか?」

「なに言ってるの? わたしもう大人なんだから――」

「大人だったら、家族に迷惑をかけるような相手と付き合うな。わかったな!」

兄は怒号を上げ、大きな扉の音をたてて部屋に入っていってしまった。

わたしはあまりのことに、その場にへなへなと座り込んで、しばらくの間動けなくなった。
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