【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
翌朝――。

わたしは駿也と一緒に自宅マンションの扉の前で、深呼吸をしていた。

昨日は何も連絡を入れずに外泊をしてしまった。

きっと扉の向こうにはすごい剣幕の兄の姿があるだろう。

憂鬱な気持ちで玄関の扉に手を掛ける。

覚悟をして扉を開けたその先にいたのは思いもよらない人だった。

「ひよりちゃん、おかえりなさぁ~い」

「お、お母さん!? な、なんで?」

田舎にいるはずの母がどうしてここにいるの?

驚くわたしをよそに、母はわたしに抱きついてきた。

その背中越しに兄が忌々しそうな顔で、わたしの後ろに立つ駿也をにらみつけていた。

なんかもうこれ……どうしたらいいんだろう。

母に抱きしめられたまま、無理矢理駿也を振り返ると、にっこりと人の良さそうな笑顔を浮かべていた。

わたしから見れば胡散臭い以外の何ものでもないその笑顔に、彼がこれから何かをしようとしていることだけは分かった。

なぜか部屋の主でもない母に「どうぞどうぞ」と勧められ、わたしと駿也はリビングのソファに並んで座らされた。
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