【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
兄はそんなわたしたちを見張るかのように、だまったまま腕組みをしてこちらをじっと見ている。
いつ怒り出すかわからずに、戦々恐々だ。
気まずくて落ち着かない。
けれどこの状況をわかっていないのか、母はのんきにお茶の準備をしていた。
「皆川さん、おまんじゅう食べる?」
「結構ですので、お気遣いなく……」
「あら、お嫌いなの?」
「いえ、そういうわけでは……」
母の天然の炸裂に駿也もいささか動揺しているように見える。
母は昔からこうなのだ。
空気が読めないのか読まないのか……つねにどこかふわふわしているような人。
だからこそ、兄があんなふうに口うるさくなってしまったのだと思う。
「さあさあ、みんなそろったことだし、お茶にしましょう」
母はお客様用のカップに淹れた紅茶をテーブルにおいて、お茶請けにおまんじゅうを置いた。
どうしてこの組み合わせ? そう思うけれど、今はそれどころではない。
「お母さん〝そろったことだし〟ってどういうこと?」
「あら、それは皆川さんがお話があるって言うから」
驚いて隣を見ると、駿也が母に向かっていきなり頭を下げた。