【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網

兄は納得できないのか、眉間に皺をよせたまま首を左右に振っている。

「謝ってくれたんだからいいじゃないの。いつまでも男のくせにグチグチ言わないの」

そんな兄の姿を見て、母は紅茶を飲みながら兄に言い聞かせる。

「では、お母様は賛成していただけると言うことですね」

「はい、もちろん。こんなイケメンの息子が出来るなんて、幸せだわ」

「おふくろっ!」

「だまらっしゃい、倫太郎」

それまでニコニコしていた母の顔が、真顔になり兄をピシャッと黙らせた。

それまで大騒ぎしていた兄が、黙りこくる。

「ひよりの幸せはひよりの心の中にあるの。
だからわたし達がとやかくいう権利はないのよ。あなたもそろそろ妹離れなさい」

母は強し。こうなると家族の誰も彼女に逆らうことはできないのだ。

「皆川さん、ひよりをどこに出しても恥ずかしくない娘に育てた……って言えればいんだけど、まだまだ子供で世間知らずのところがあります。
ですが親のわたしが言うのもあれですけれど――」

そこまできて、母の目に涙がにじんだ。

それを見たわたしの目頭も熱くなる。とうとう我慢出来ずに、涙を拭う。

「素直で、優しい子です。ですから……どうか大切にしてやってください」

「……っ……」

涙が止らなくて鼻をすするわたしに、兄がティッシュを差し出してくれる。

受け取ると、まだ納得はできていないみたいだったが、その顔からは怒りの色は消えていた。

それを見て、またわたしの涙が止らなくなる。

泣きじゃくるわたしを見て、駿也が頬を緩ませた。

「何もかも中途半端だった俺を、ひよりが一人前の男にしてくれました。これからも感謝を忘れず、彼女を大切にしていきます」

母がうれしそうに微笑んだ。
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