【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
「おい、離れろっ! 遅いと思って見に来てみたら、油断もすきもないな」

兄がすごい剣幕で走ってきた。

「やばい。駿也、もう行って。後が面倒だから……って、え?」

いきなり駿也はわたしの手をひいて助手席側にひっぱった。

そしてドアをあけるとあっという間にわたしを車の中に押し込めた。

「ちょっとどういうこと?」

さっさと運転席に回った彼は「シートベルト」とだけ言うと、すぐに車のエンジンをかけて車の窓を開けた。

わたしは彼の意図がかわらないまま、慌ててシートベルトを締める。

「お兄さん、ひより借りていきます!」

まだマンションの自動ドアの前にいた兄に大声で話しかけた。

「お兄さんって言うな!」

帰ってきた言葉を笑いながら無視した駿也は、そのまま車を発進させた。

「あはは! あの顔見たか?」

「ちょっと、わたしお財布も持ってないよ」

駿也を見送るだけのつもりだったので、スマートフォンが手にあるだけだ。

「別に必要ないだろ。俺は、ひよりがいるだけで満足だから」

色々文句をいうつもりだったのに、駿也の言葉に顔がにやけてしまってそれどころではなくなった。

結局わたしは彼に連れられるまま懐かしい場所に到着した。

そこはわたしと駿也が初めて話をしたあの、同期会の行われた店が入っていたビルだった。
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