【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
「わたしには話なんてないけど」

「俺にはある」

キッと睨みつけたところで、駿也はひるむことなんてなかった。

そもそもわたしが彼に勝てたことなど一度もない。

だったらさっさと諦めて話を聞く方が早い。

諦めたわたしは、駿也の手を引きはがした。

もう一度掴もうと手を伸ばしてくる駿也の手を止めて、一歩距離を取る。

「わかったから、早く話をして」

わたしは両手で自分を抱きしめるようにして、彼から視線を逸らす。

そうすることで、さっさと終わらせてしまいたいと彼に伝えたつもりだった。

ずいぶんな態度だと思う。駿也が相手じゃなければこんな態度はとらない。

しかし駿也はわたしの態度など歯牙にもかけず、ふっと笑った。

それがどうしても許せなくて――。

「何がおかしいの?」

ケンカ腰のわたしを見て、なおも愉快だというように笑い出した。

「いや、気が強いのはまったく変わらないなって」

「変わらないわけないでしょう。何年経ったと思ってるの?」

「四年だろ」

わたしは軽く目を見開いて驚いた。まさか覚えているなんて。

「何? 俺が覚えていて驚いた?」

きっちりわたしの反応を言い当てられて、余計にイラっとした。

どうして……彼には伝わってしまうのだろう。どうして、彼なのだろう。

避けていた視線を彼に向ける。

わたしたちの視線が絡む。

お互いの微妙な距離が友達にも知り合いにも戻れない……ふたりの関係を表しているようだった。


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