【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
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いつもと変らぬ朝の風景。
出勤後すぐに向かうのはロッカールーム。
ほぼ内勤のわたしは、ここで社内用のヒールに履き替え、軽く身だしなみを整えてから三階の営業部のデスクに向かうつもりだった。
赤城ひより、二十五歳。
短大卒業後にあさひ証券株式会社入社後、営業部に配属され窓口業務や、営業社員のアシスタントをしている。入社して六年目。
仕事は華やかではないけれど、裏方気質のわたしには向いている仕事だと思っている。
毎日代わり映えがないといえばそれまでだけれど、平凡に平和に過ごしていた。
「おはようございます」
ロッカールームへと続く廊下で、前を歩く先輩である尾関恵麻さんに声をかけた。
彼女は一年前に素敵な男性と運命の出会いを果たして結婚。
赤ちゃんにも恵まれ大きなおなかを抱えた今も、仕事量は減ったものの営業を続けていた。
「あぁ、ひよりちゃん。おはよう。ふーっ」
「おなか大きくなりましたね」
「そうなの。困っちゃう」
先週からマタニティ用のワンピースを身につけるようになった彼女のおなかは、ずいぶん大きく見えた。
「おかげで動くのも結構大変になってきちゃった」
ロッカールームに入り、尾関さんが奥へ向かっているのを見てわたしは呼び止めた。
「尾関さん、ロッカー交換しましょう?」