【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
あの頃の自分は何も知らなくて、ただただ側にいる駿也を盲目的に信じて恋をしていた。
でも今のわたしはあの頃とは違う。
前野くんが言った『住んでいる世界が違う』という言葉が頭の中に響いた。
わたしと駿也は再会してしまった。お互い四年も経つと変ったところだって多いだろう。
けれど変らない部分だって多いはずだ。
そしてそれがわたし達が別れた原因の最たる部分なのだとしたら、やり直すことなんて到底無理だ。
政治家の息子で自身の会社も経営しているなんて、むしろ以前よりも距離ができてしまった。
結局昔も今も、わたしたちの置かれた環境は変らない。
だからこそ、やり直せるなんて夢は見るものじゃない。
もう一度四年前と同じ苦しみを味わうことなんて想像もしたくない。
立ち直る自信なんてこれっぽっちもない。
だからこそ、全力で駿也から逃げなくては……。
タクシーの窓から覗いたネオンに囲まれた空には、小さな星が頼りなげにひとつ瞬いていた。