【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
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わたしと駿也の出会いというのは、本当にありふれたものだ。

あさひ証券に同期として入社したわたしたちは、自然と仲良くなっていった。

短大卒の一般職のわたしと、誰もが知る大学を卒業した期待された総合職の駿也とは、最初の一般研修だけが一緒だった。

全国で同期入社は三百人近い。その中で彼との接点なんてないはずだった。

お互い本社に配属されても会話もそう多くなかった。

彼は入社後すぐに外務員登録をすませて、あれよあれよという間に頭角を現した。

他の新卒の社員がたどたどしい営業の電話をする隣で、

新人が最初に扱う国債をバンバン売り、新規の顧客もどんどん獲得した。

そのすごさは社内にあっという間に広がり、誰もが皆川駿也の名前を知ることとなった。

そんな彼をわたしは「すごい人もいるものだな」と、遠巻きに見ていた。

そんなわたしたちが話をするきっかけになったのが、その唯一の共通点である【同期】というのが大きかった。

入社後半年たったころ、本社や周辺の店舗の同期が集まって同期会をしようという話が持ち上がった。

会社にも慣れ、お互い色々と情報交換しようという名目だったが、実際のところは、上司や先輩への愚痴や仕事に対して〝思っていたのと違った〟というような話を、ああだこうだと話をしていた。

わたしも久しぶりに会った他の店舗に配属になった女の子たちと、カクテルを飲みながら話をしていた。

まわりの女子社員にあわせてファジーネーブルを飲みながら、それよりも甘い彼女たちの恋愛話に耳を傾けていた。

いいなぁ。彼氏か……。

大学生一年の時にできた彼氏とは自然消滅。それ以来誰とも付き合っていない。

彼氏が欲しいとは思うけれど、あの面倒な兄に対抗できるくらいわたしのことを好きになってくれるひとがこの世にいるとは思えなかった。
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