【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
「いや、俺はもういいから」

「なんだよ。お前もしかして酒弱いのか?」

挑発するような態度が気に食わなかったのか、皆川くんは軽く相手を睨みグラスに手をかけようとした。

ダメ……さっきまであんなに苦しそうにしていたのに。

頭で考えるよりも体が先に動いてしまっていた。

わたしはテーブルの上に置かれていたグラスを掴むと、ほとんど泡の残っていないぬるいビールを一気に飲み干した。

「あ、おいっ!」

皆川くんが手を伸ばして止めようとしたけれど、そのときにはすでにグラスの中身は空だった。

突然現れ、一気飲みを披露したわたしに周りの皆は驚いて一瞬静かになった。

あれ……ちょっとやばかった?

そう思った瞬間、どっと笑いが起った。

「いや~赤城ちゃん、最高! そんな男前な飲み方できるなんて知らなかったよ。
まだ高校生みたいな顔してるのに、な」

酒を勧めた社員が愉快そうに笑っている。

高校生はいくらなんでも失礼じゃないか。童顔なの結構気にしているのに。

ちょっとムッとしたけれど、酒の席の話だ。にこやかに本音を隠す。

へらへらと笑っているわたしの手を引っ張る人がいた。皆川くんだ。

「おい、大丈夫なのか?」

「何が?」

大丈夫か聞きたいのはわたしだ。さっきまで咳き込んで苦しそうにしていたのに。
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