【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
うんうんとうなずく。わたしだって兄に対しては同じことを思っている。
「ということなの。ごめんなさい」
頭を下げたわたしに、皆川くんは「わかった」と言った。
「じゃあ、お疲れ様です」
「待った」
歩き出したわたしの手を、皆川くんが掴んだ。
「何、さっさと帰ろうとしてるんだよ」
「でも――」
話は終わったはずだ。わたしの話を彼が遮る。
「今日はダメだけど、別の日ならいいってことだろう?」
「まぁ、そうだけど」
「だったら、今週の金曜は?」
頭の中で予定を確認した。今週は今のところ何も予定はない。
だけどどうしてそこまでしてわたしを飲みに誘うのだろうか。不思議だ。
「大丈夫ですけど」
「だったら決まりな。スマホ出して」
言われるままにわたしはバッグからスマートフォンを取り出すと、彼がさっと手に取って操作してしまう。
「パスワードくらいかけとけ」
「え、あ、うん」
なんだか状況がよくわからずに、彼の様子を見ているうちにずいっと突き返された。
「連絡先、入れといたから」
「あ、そうなんだ」
バッグにスマートフォンをしまって、皆川くんのほうを見る。
「じゃあな。俺は仕事に戻る」
「え? 仕事終わったんじゃないの?」
「あ? 赤城と飲みにいかないなら、仕事する。じゃあ、金曜日にな」
そういって歩き出した彼が、足を止めて振り向いた。