【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
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ぐいっと手を引かれて、我に返る。
「やり直そうなんて言わない。俺はもう一度お前を手に入れる。最初からもう一度、俺に惚れさせてみせる」
突き刺さるような眼差し、掴まれた腕の強さ。
彼が真剣に話をしているのが伝わってくる。
「確かに俺は皆川の息子だ。ややこしい家だってことは嫌ってほどわかっている。だけど、俺だって好きであの家に生まれたわけじゃない。
ずっと父親の秘書に政界入りをしつこく迫られていた。四年前の俺と歩いていた女は親父の第二秘書だ。ちなみにお前に会いに行ったメガネの男が第一秘書な」
悔しさは今でも変らないようで、彼の表情からそれがうかがえた。
「あのころの俺は、親父たちに立ち向かうほどの力がなかった。
だから約束させた。五年で親父を納得させる男になったら、俺を自由にしてくれって。
四年間死に物狂いで頑張った。それで、親父を納得させた。俺が親父の跡を継ぐことはない。おれは自由になった」
「納得させるって、会社を経営しているってこと?」
「まぁそれも一部だな。一番は親父の政治資金を一年で倍に増やした。政治で大事な資金調達を担うことで、俺の価値を見いだしたんだろうな」