【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
なんだか聞いていて、切なくなった。自分の子供を役立つかどうかで判断するだなんて。
「なんか……複雑」
「お前がそんな顔するな。他の客と一緒だ。預かった資金を増やすのが俺の仕事だからな。
で、お前の不安は全部解消されただろ。お前が心配するようなことはなにもない。だから心置きなく、俺に落ちろ」
「……」
彼には彼なりの事情があったことはわかった。
けれどおいそれと「はい、よろしくお願いします」と言えるわけはない。
美しい切れ長の目に見つめられて、思わずうなずいてしまいそうになるのを慌てて耐えた。
「急にそんなこと言われても困るよ。わたしにだって都合が……」
「男はいないはずだろ」
「まぁ、それはそうだけど」
痛いところを突かれた。四年間決して駿也を待っていた訳じゃない。
だけど結果的に誰とも付き合えなかったのは事実だ。
ただここで流されるわけにはいかない。
たとえ彼が皆川家とは今後深い関わりを持たないと思っていても、将来のことは何も分からないのだから。わたしだけのことじゃない。
皆川家の人が兄に対してしたことを忘れたわけじゃない。
わたしだけならまだしも家族に危害を加えられたらと思うと、自分の気持ちがどうであれ、彼について行くことなんてできない。
煮え切らないわたしに、駿也はじれったそうにしていた。