【最愛婚シリーズ】俺に堕ちろ~俺様社長の極甘な溺愛包囲網
「高山さん、あなたはなぜこんなところにいるんですか?」

丁寧だけれど冷たい声は、彼の怒りの現れだ。

「彼女にいったい、何の用があるって言うんだ。君にそんな権利一切ない」

「なっ……わたしは駿也さんのことを思って――」

「いい加減にしろ」

高山さんの言葉を、駿也の切り裂くような鋭い声が止めた。

「俺の為? いったいいつそんなことを頼んだ? 俺は親父の後を継ぐつもりはない。
ずっとそう言い続けてきただろう」

「でも、先生の跡を継げるのはあなたしかいないんですよ。
それに能力もカリスマ性も十分あります。わたくしが私生活共々お支えいたしますから」

高山さんがすがりつくように手を伸ばしたが、すかさず駿也がその手を押し返す。

「俺が支えて欲しいと思っている女はひよりだけだ」

はっきりと言い切られた女性は、悔しそうに唇を噛んでいる。

「どうしてその女なの? 何の取り柄もない。あなたの人生に何の役にも立たないじゃない」

彼女の言葉に思わず体が震えた。

そんなわたしの手を引いて、振り向かせぐっと肩を抱いた。
「おい、ひよりを悪く言うな。役に立つ立たない、そんなことは俺にとってはどうでもいいことだ。
ひよりだから、何があっても側にいたいと思ってる。
だからもうどんな嫌がらせをしても無駄だ。
これ以上つきまとうなら、こっちも考えがある。分かったら、さっさと消えろ」

怒号をあげることはなかったけれど、駿也の地を這うような声を聞いた高山さんの顔におびえの色が走る。

「俺の前に二度と現れないでくれ。行くぞひより」

駿也に手を引かれて高山さんの横をすり抜けた。

その瞬間彼女の頬に涙が伝うのが見えた。

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